正しく書かれていない遺言はトラブルの種

行政書士

遺言は、金田一やコナンのような推理漫画や火サスなどのドラマに出てくるので、おおよそどんなものかは知っていると思いますが、実際に本物を見たことがある人は少ないのではないでしょうか?

そもそも遺産を相続する人たちが遺産の分割についてちゃんと話し合って決めることができるのであれば、遺言は必要ありません。

でもそうはいかないんですよね。

遺言は、死後に自分の意思を伝えるために書きます。

遺産を渡すなら、自分を大切にしてくれた人に多く渡したいと思うのが人情ってもんです。

遺産分割を不平等にするのが、遺言をつくる大きな目的です。

遺産が土地だけで分割できない、他の人に自分の財産を相続させたいなどの場合、遺言があることによって相続人間のトラブルを避けることができるかもしれません。

遺言は、つくれるときにしっかりとつくっておくことが大事です。

ただ、せっかく書いた遺言書が無効になってしまっては意味がありませんよね。

今回は、有効な遺言をつくるための重要な5つのポイントについて解説します。

遺言をつくる際にはしっかりと押さえるようにしてください。

遺言は、認知症になる前につくる

現在、65歳以上の6人に1人が認知症だと言われています。

認知症相続は、大きなトラブルになります。

親が認知症になると、財産を把握できなくなる、認知症だと知った銀行が口座を凍結してしまう、認知症の人が所有する不動産を売ることができないので、生前に親の財産整理ができないなどトラブル続出です。

認知症になった人の法律行為は無効とされますので、遺言も無効。法的な効力を持ちません。

認知症になる前に、必ず遺言をつくっておきましょう。

それと、遺言の内容を不満に思った相続人から、遺言の無効を訴えられないよう、遺言を作った時点では認知症ではないということが分かるような客観的な証拠を残しておくことも忘れないようにしてください(診断書や介護記録など)。

遺言は、自分で書く

遺言は自分で書く必要があります。

パソコンでつくってはいけません。

鉛筆や消せるボールペンで書くのも✕。

見られないように、紛失しないようにすることも重要です。

不動産の場合は、「所在地」「番地」「地目」「地籍」を記し、預金や株式は、それぞれを特定できるように書かなくてはいけません。

また、「○○を相続させる」とはっきりと書きましょう。「○○を任せる」などとしてしまうと、相続が成立しなくなる可能性があります。

不平等な遺産分割を遺言する場合、付言事項都市遺産分割の根拠を書いておき、不公平感を和らげるようにするとよいでしょう。

法務局保管制度を利用する

遺言は、自分で書いて保管しておけばいいのですが、死んだときに相続人がどこにあるかわからない状態では意味がありませんし、見つけられて偽造・破棄されてもいけません。

ですから作成した遺言書は法務局に保管するのがオススメです。

自分で書いた遺言のことを自筆証書遺言と言います。

自筆証書遺言は、紛失・偽造のリスクがありますが、法務局に自筆証書遺言を保管することによってこれらのリスクを解消することができます。

また、自分が死んだときに相続人に通知が行く仕組みになっていますので、遺言が見つけられないというトラブルを避けることができます。

ちなみに、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言(公証人という遺言のプロがつくるもの)にすると、さらに遺言が無効となるリスクが少なくなりますが、手続きが難しく、また相続財産価格に応じた手数料が必要になります。

遺留分を侵害しない

相続人には遺留分といって、最低限保証されている相続財産の受け取り分があります。

遺言を作る場合は相続人の遺留分を侵害しないようにしなければいけません。

相続人の遺留分を侵害した遺言が無効というわけではなく、侵害された相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があるということです。

遺留分は、法的に保護された遺産の取り分であり、法定相続分の半分となっています。

被相続人に妻と子ども二人がいる場合、妻の遺留分は1/4,子どもはそれぞれ1/8です(法定相続分は、妻が1/2、子どもが1/4)。

たとえば、子どもには一切相続を指せない旨の遺言をしたとしても、子どもは1/8の遺留分を請求することができます。

遺留分の配慮を怠ると相続が「争続」になりかねません。

遺言執行者を指定する

遺言執行者とは、相続人に代わって遺言書に記載された内容を実行する人のことです。

具体的には預金や株の遺産名義の変更です。

遺言の中身が相続人に不平等な内容で、紛争状態になる可能性がある場合には弁護士や司法書士、行政書士など第三者を遺言執行者に指定することが多いです。

「死」について考える

「自分の死」「親の死」。

そのときは確実にやってきます。

何も備えていなければ、相続は、残された人の不幸の始まりにもなりかねません。

だからこそ「死」について、一度じっくりと考えてみる必要があるのではないでしょうか。

残された人が幸せに生きるためにポイントをしっかり押さえ、ぜひ争いの種にならない遺言をつくってください。

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