産業廃棄物収集運搬業許可について

行政書士

個人で解体業を営んでいる方から、

「産廃の収集運搬業許可を
 取りたいんですけど…」

というご相談をいただきます。

「今の解体屋さんを辞めて
 独立するつもりなんです!
 
 ただ、どんな許可取ったらいいか
 わからないので、ゼロから
 教えてもらえませんか?」

こんにちは。
福井県福井市の行政書士、
太田哲郎でございます。

わたしは不動産・建設業の営業経験があり、
父も自営で建設業を営んでいますので、
産業廃棄物とは切っても切れない
関係にあるといっても過言ではありません。

産業廃棄物って五文字も漢字が並ぶと
途端に難しく感じてしまいますよね。

でもそんなに難しく
考える必要はありません。

産業廃棄物とは簡単に言うと
「仕事で出たゴミ」のことを言います。

ちなみに家庭で出たゴミのことを
一般廃棄物といいます。

だいぶイメージしやすくなったのでは
ないでしょうか。

今回は産業廃棄物関連で
わたしが取り扱っている業務について
解説していきます。

産業廃棄物収集運搬業許可申請

産業廃棄物収集運搬業許可は、
解体屋さんや便利屋さんであれば
必須の許可だと思います。

産業廃棄物収集運搬業許可が
必要になるのは、

他人が出したゴミを集めて
処分場まで持っていくことを
商売とする場合

です。

具体的なケースで言うと、
建設現場に下請けで入り、

元請けが現場で出した産業廃棄物を
処分場に持っていく場合に
許可が必要になるということです。

逆に言うと、自分が出したゴミを
自分が処分場に持っていく場合は
許可は必要ないわけです。

産業廃棄物収集運搬業の許可は、
ゴミを積み込む都道府県、運搬先である
処分場がある都道府県それぞれの
許可が必要となります。

建設業許可にある
大臣許可のようなものはありません。

産業廃棄物収集運搬業は
資格や役員の経験が必要なわけでは
ないので建設業許可よりも
許可がとりやすいと言えます。

ただし、注意点が3点あります。

ひとつめは、許可を受けようとする役員が
日本産業廃棄物処理振興センターが行う
講習会を受講し、試験に合格して
修了証をもらわなくてはいないことです。

日本産業廃棄物処理振興センター

講習会を受講する役員とは、
登記簿上の役員であり、一般的には
代表取締役が受けることになるかと
思います。

新規の講習会の場合は受講後5年間、
更新の講習会の場合は受講後2年間
有効なので早めに受講して
もらいましょう。

もう一つ大事なのが、
車両を持っていることです。

収集運搬をする車両がないと
そもそも業務を行えない
ということになり、
許可申請できません。

車両とは、ダンプやバン、
ゴミ収集車などです。

経理的な基礎を有していることも
重要な許可要件になります。

債務超過に陥っている場合は、
中小企業診断士等に、財務診断書などを
作ってもらう必要が出てきます。

今後会社の財務がどう変わっていくか
ということをレポートにして
もらわなくてはいけませんので
注意が必要です。

赤字になってなければ
特に問題はありません。

講習会の受講まで含めると
許可が下りるまで3-4か月は
見ておきたいです。

講習会をちゃんと受講して、
車両が準備できるのであれば、
許可を取るのは
そこまで難しくはありません。

積み替え保管

積み替え保管とは、元請けの現場で
出たゴミをいったん自分の会社の
敷地に保管して、

他の現場から出たゴミとを
全部まとめて処分場に持っていく場合の
許可申請です。

積み替え保管の許可申請の場合、
単なる産業廃棄物収集運搬業許可とは
異なり、

産業廃棄物という
デリケートなゴミを保管しておく
ことになるので許可を取るのは
たいへん厳しくなります。

具体的には、
周辺住民全員の同意が必要だったり、
事業計画を詳細に練らないと
いけなかったり、

場合によっては騒音・振動を測定して
基準値以内に収まっていることを
確認しないといけなかったりなど

やるべきことが多く、
申請先の自治体も許可を下すのに
慎重ですので、期間は半年以上
かかることになります。

産業廃棄物処分業

産業廃棄物処分業の許可申請は、
収集運搬業許可申請とは
打って変わって許可の要件が複雑であり、

場合によっては許可が取れないことも
十分ありうる、気を付けなければ
いけない許可申請です。

処分業には、破砕機などによる
基本的な中間処理から、
焼却炉などがある中間処理、
最終処分などの許可申請があり、
関係してくる法令は多岐に渡ります。

今回は基本的な中間処理による処分業の
許可申請で押さえておくべき
基本事項を説明していきたいと思います。

まず、中間処理をする処分場を設置して
よい場所かどうかを確認する
必要があります。

いわゆる産廃処理施設というのは、
騒音、粉塵などが出ることもあり、
周辺住民の生活に影響を与えるため、
設置できる場所が限られています。

場所の要件を確認するために、
パンフレットや処理能力計算書など
導入予定の施設資料と
都市計画法及び都市計画図を
確認しなければいけません。

産廃処分場で規模の大きなものは
勝手に設置することができません。

規模の大きな産廃処理施設を
設置する場合には、

産業廃棄物処分業許可申請の前に、
産廃処分場の設置許可が
必要になってきます。

設置許可が必要な場合は
手続きが一気に難しくなります。

設置許可を取るには、
環境アセスメントが必要になり、
これの準備がかなりたいへんです。

環境アセスメントとは、
その処理施設から出る音や粉塵、
有害物質を調査し、

環境や周辺住民に影響がないことを
確認したレポートになります。

作成は専門の測量士などが行い、
作成費用は100万円前後です。

そのほか図面の作成など、
行政書士だけでは完結しない業務が
多く出てきます。

また、用途地域によっては
建築基準法51条但し書き許可が
必要となります。

金沢市 建築基準法51条但し書き許可

都市計画区域内においては、
廃棄物処理施設などは都市計画で
決められたもの以外は新築・増築
してはいけません。

ただし、都市計画審議会の議を経て
許可された場合、または一定の
規模以下の施設であれば、
新築・増築しても良い、
とされています。

またそれに伴って都市計画法の
開発許可が必要となってくる
こともあり、たいへん複雑です。

産業廃棄物関連の許可申請は
収集運搬業許可申請がベースの
知識となるわけですが、

そもそも建設業や解体業に
なじみの無い行政書士だと
手間取ってしまうかもしれません。

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