「行政書士は食えない」という意見は、正しいと思います。
行政書士は食える、稼げる、と言っている人は、全員が例外なく「行政書士で食えるかどうかは、努力次第」という、何の意味もない、あたりまえで、期待外れの残念な結論を出してくれています。
実際に行政書士で食えている人は、営業を苦にしない明るくて人に好かれやすい性格であったり、強力なコネクションがあったり、寝ずに勉強するなどすさまじい努力をしていたりと、行政書士じゃなくても食えるんじゃね?と思ってしまう人ばかりです。
ですから、繰り返しになりますが、サラリーマンや公務員上がりの普通の人であれば、「職業:行政書士」は、食えないです。
私が考える「行政書士が食えない理由」は、以下の4つです。
行政書士が食えない理由① 行政書士に、わざわざ頼まなくてよい
車庫証明などは、自分で取った人も多いと思います。
建設業許可や遺産分割協議書についても、その気になれば、自分で作成できます。
役場や裁判所のホームページを見れば、準備する書類や書き方が丁寧に説明されています。
行政書士に扱える業務は10000以上ありますが、行政書士の資格がないとできない独占業務は、決して多くありません。
行政書士が食えない理由② 単発の仕事が多い
行政書士の仕事は、建設業の許可申請関連業務を除けば、ほとんどが1回きりです。
弁護士であれば、企業の顧問弁護士として毎月一定の収入が入ってきますし、税理士であれば毎年確定申告業務などの仕事がありますから、安定して収入があります。
一方で行政書士は、顧問契約というのは聞いたことがないです。
行政書士の歩業務である許認可申請であれば、許認可が下りれば終わりですし、相続や離婚などの民事であっても、それらが成立すれば終わりで、定期的に仕事が入ってくるわけではありません。
常に新規案件を追いかけなければいけないのです。
はっきり言います。
行政書士の仕事=営業になってしまいます。
書類作成ではありません。
営業力がないと話にならないのです。
行政書士が食えない理由③ お客さんがいない
行政書士の仕事は、
- 500万円以上の工事を行う建設業の許可申請
- 田んぼに家を建てたい人の農地転用許可申請
- 身内が亡くなった人の遺産分割協議書作成
- 外国人の登録や永住権の書類作成
- 会社設立のための定款作成
- 内容証明郵便の作成
- 飲食店をオープンするための許認可申請
などです。
これらの仕事は、いつも絶え間なく発生するわけではありません。
少ない仕事をコンビニの数より多い行政書士が取り合います。
営業力もないのに、数少ない限られたお客さんがあなたのところに来ますか?
行政書士が食えない理由④ 実務経験を積む機会がない
行政書士試験の内容は、実務でほとんど役に立ちません。
ですから、実務の知識をつける必要があるのですが、修行する場がないんですね。
飲食業をやるのであれば、飲食店で仕事して経験を積むこともできますし、不動産屋をやるのであれば、不動産会社に勤めて実務経験を積むことができます。
しかし、行政書士に、求人はほとんどありません。
実務の知識がない行政書士に、仕事を依頼する人などいないです。
行政書士は稼げる「資格」である。
ただし。
行政書士が食えない、といったのは、「行政書士という職業が食えない」という意味であって、行政書士という資格が食えない資格であるという意味ではありません。
「行政書士の資格」を「武器」と考えるとどうでしょうか?
行政書士の資格を持っている○○屋。
このように考えると、いきなり強力でユニークな売りのある○○屋になれます。
そもそも行政書士は、合格率10%ほどしかない難関資格であり、巨大な参入障壁があります。
その資格を装備しているだけで、他の○○屋と差別化できてしまいます。
行政書士は、何かと組み合わせるべし。
行政書士の資格は、他のものと組み合わせて活用することで、絶大な力を発揮します。
典型的な例が、宅建士とのダブルライセンスで不動産業を営むケースです。
宅建業の免許申請にはじまり、土地を造成して売るのであれば、開発許可や農転許可、建物の賃貸であれば飲食業津の許認可、仲介で土地建物を売る際には、遺産相続の話も出てきます。
住宅会社や土木・解体業、配管業者や電気業者とも付き合いがありますので、建設業許可申請業務の提案ができます。取引業者やお客さんに補助金申請の提案もできます。
不動産を売りたいおじいちゃんや、不動産を借りたい若夫婦など老若男女問はず様々な人と出会うことができ、そのすべての人に行政書士の資格を役立てることができますので、お客さんに困ることはありません。
行政書士の資格を持っていると、扱える業務が多いので、他の何かと組み合わせることによって、誰も目をつけていないような業務が、今後新しく生まれる可能性があります。
自分が興味を持っていることと行政書士は、必ず関連性がある。
行政書士を開業したのであれば、ぜひ行政書士の業務にとらわれずにビジネスをしてみてください。
たとえば、漫画やゲームや音楽が好きなのであれば、漫画・ゲーム・音楽関連のビジネスをしながら、著作権登録申請のプロになる、とか。
運動が好きなのであれば、パーソナルジム開業を開業しながら、個人事業主のアドバイザー的な立場になる、とか。
釣りが好きなのであれば…何がありますかね。
たとえば、水産庁のホームページでも見てみてください。
行政書士として取り扱えるものがあるかもしれませんので。
麻雀が好きです、だったら、雀荘経営しながら、行政書士としての関連業務とすれば、風営法4号の許可申請がありますね。
キャバクラが好きです、だったら、風営法1号の許可申請が関連しています。
上の例は思い付きで適当に言っているので、自分でやる場合はしっかりと調べてからやってほしいのですが、とにかくここで言いたいのは、行政書士の業務にとらわるな、ってことです。
それよりも、自分が興味を持っていることと行政書士の資格に何か接点はないかな…と考えてみてください。
行政書士と「自分が興味ある何か」が組み合わされば、そして、それが宅建業のように抜群の相性であれば、ライバル不在の強力なビジネスになります。
行政書士という職業ではなく、行政書士という武器を最大限に生かせるように考えてみてはいかがでしょうか。
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