隣の家からウチの敷地内に落雪!被害はないけどクレームを言ってもいいの?

不動産

「屋根に雪止めがついていないから、隣の家からの落雪が心配。」

「最近新築したお隣さん、境界からあまり離れてないのでうちの敷地に雪が落ちそう。」

 今回は、隣の家からの落雪トラブルについてのお話です。

 私の住んでいる福井県福井市では、冬になると雪が降ります。雪が降ると必ず起きるのが落雪による近隣トラブル。何度も見てきました。

 昔の家の屋根には雪止めがついていないことも多く、その場合はズルズルドサドサと屋根雪が落ちますし、新しい家であっても雪止めがついているとはいえ、軒先の雪は当然落ちます。新しい家は、最近の物価上昇で住宅価格が上昇した分狭い土地を買って価格を抑える傾向にあり、そうなると隣地間隔も当然に狭くなるわけで、ますます落雪トラブルの起きやすい環境になっています。

「お隣さんだからあんまり言いたくないけど…」

と思うかもしれませんが、いざというときははっきりと言わないといけないこともあります。

 そのためにもまずは、トラブルを防止するための方法、トラブルが起きたときの対応についてぜひ学んでみてください。

屋根の落雪を防止する方法

 屋根からの落雪を防止するための対策は大きく2つ。取付部分にもよりますが、いずれも20万円ほど必要となります。

■雪止め金具を取り付ける
■雪止めネットを取り付ける

 屋根をふき替えるとか、屋根融雪などの対応もありますが、費用がかかりすぎて非現実的です。

隣の家からの落雪によって自宅が被害を受けた場合

民法 第218条
土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。

民法 第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法 第717条
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。

 隣の家の屋根からの落雪によって自宅が被害を受けた場合で、隣家の所有者が雪下ろしを怠ったり、雪止め金具を設置していなかったりなどの落雪防止のための措置を怠っていた場合は損害賠償請求ができます。

 ただし、どんな場合でも損害賠償請求ができるわけではありません。

 たとえば予想外の大雪の場合や、雪下ろしを適切に行っていて雪止め金具や落雪ネットも正しく設置されているなど、やるべきことをしっかりやっている場合は損害賠償請求はできません。何でもかんでも被害があったら損害賠償できるとうわけではないので、その点は注意が必要です。

隣の家からウチの敷地内に落雪(被害はない)

民法 199条
占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

民法 第218条
土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。

 隣の家から境界を越えて他人の敷地に雪が落ちてきた場合、妨害排除請求権を行使して雪止め設置などを依頼することができます。妨害予防請求権とは、物件の所有者が侵害者によって被害に遭わないために、未然に対策してもらうように請求できる権利です。

 ただし、これも損害賠償請求と同様に必ずしも請求が通るわけではありません。

 妨害予防請求権を行使するには、著しく危険な状態であると判断される必要があります。雪が落ちてきそうだからなんとなく心配、というぼんやりした理由で妨害予防請求するのではなく、具体的に根拠を示してあげるのが効果的ではないでしょうか。


 屋根からの落雪が敷地の境界を越えて他者に被害を与えたり、近隣に悪影響を与えた場合、過失があると認められれば、損害を賠償しなければならない可能性があります。


 落雪被害に遭った際は、証拠があればよりスムーズに賠償を受けられるため、損害を受けた箇所を動画や画像で記録しておくのが良いです。また、火災保険や個人賠償保険が使えるケースもありますので、保険会社や相手方に確認してみるのもよいでしょう。

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