旅券、査証、在留資格、ESTAと言われてひとつでも「?」があるようでしたら、まずは海外旅行を通して入管手続きというものを理解することをオススメします。
私がはじめてアメリカのシアトルに行ったとき、何をどう手続きすればいいのか、何を長時間並ばされているのか、その手続きに何の意味があるのかさっぱり分かっていませんでした。
入管手続きは聞きなれない言葉が多く、普段外国人と接する機会が少ない人にとってはたいへんなじみの薄いものです。しかし、インバウンドの回復、少子高齢化に伴う外国人労働者の来日など、日本に来る外国人は増加傾向にあり、外国人の入国、在留を規律する出入国関係の法令や手続きは身近なものとなってきました。
入管手続きの理解は、これから外国人を雇おうと考えている企業や日本で働きたいと思っている外国人にとってとても重要なことです。ということで、まずはイメージのしやすい海外旅行というものから考えていこうじゃないか、というのが今回のお話の趣旨です。
海外旅行から学ぶ入管手続き
海外旅行は基本的に短期の滞在です。外国への滞在が中長期にわたる場合に在留資格が必要となるのですが、それは外国から日本に来る外国人も同じです。海外旅行などの短期の滞在と仕事などによる長期の滞在では何が違うのかということが分かれば入管手続きも理解しやすくなるというわけです。
外国に行くためには旅券が必要です。旅券とはパスポートのことで、日本国政府が発行する世界で通用する身分証明書です。
そして、外国に滞在するためには原則として査証が必要です。査証はビザとも言われます。この人が持っているパスポートは正しいもので、入国目的に問題はないですよ、という証明です。査証をもらうのはたいへん時間がかかります。申請してから2‐3ヶ月かかることも珍しくなく、外国に行くのが決まったならば早めに申請しなければいけないのですが、海外旅行や短期の仕事など短期間の滞在であればビザが免除となることが多いです。
(北朝鮮やロシアなど、ビザが免除にならない国もあります。)
アメリカなどは、90日以内の滞在の場合はビザの代わりにESTAという渡航認証システムで認証を受けなければなりません。ESTAにパスポートや勤務先などの情報を入力して認証を受けます。認証の審査に3日ほどかかります。査証(ビザ)取得には時間がかかりますので、留学などで海外に長期滞在する場合は事前に申請しておくことになります。
空港に着いたら検疫を行い、入国審査場という場所に並んで入国審査を受け、税関の検査を終えて、晴れて外国に入国できることになります。
私たち日本人が海外に行く場合と同様に外国から日本に来る外国人も同じような手続きが必要です。観光などの短期滞在の場合、下のリンクにある国はビザが免除になりますが、中国人ややベトナム人などはビザが免除になりません。
ビザ=在留資格?
このように短期間の外国への滞在の場合はビザが免除になる場合が多いのですが、長期の滞在の場合はそうはいきません。日本人が外国に長期滞在する、あるいは外国人が日本に長期滞在するという場合にはがビザが必要であり、そのビザを取得するためには正当な理由(たとえば結婚や就労など)となります。この正当な理由のことを在留資格といいます。
さて、ビザという言葉に関してですが、法律的には査証の意味となります。しかし、実務においては在留資格という意味で使われることが多いです。たとえば就労ビザ、正しくは「外国人が日本で仕事をするために必要な在留資格」となりますが、在留資格というよりもビザの方が短くて都合がいいので、就労ビザと呼んでいます。就労ビザのほかに、配偶者ビザや特定技能ビザ、親族訪問ビザなどがあります。言葉の正確な意味としてはビザ≠在留資格だけど、便宜上、ビザを在留資格の意味で使っていると理解しておけばよいでしょう。
ちなみに、行政書士の入管業務とは、外国人が日本に滞在するために必要な在留資格を取るために、申請書類を作成し、出入国在留管理庁に提出することがメインとなります。具体的には、たとえばベトナム人が就労ビザを取るための申請書を作成し、提出することなどです。
就労ビザ取得の流れ
日本の企業が外国人を雇って日本に来てもらう場合、新規の就労ビザ取得の流れはこのようになります。
在留資格認定申請書交付申請
外国人を雇う企業が、申請代理人として在留資格認定証明書の交付申請します。雇われる外国人は、外国にいますので代理人として雇う企業が代理人として手続します。1‐3ヶ月で交付となります。
在留資格認定書交付
申請代理人である企業に在留資格認定書が送付されます。届いたら、その在留資格認定書を雇う予定の外国人に送ります。
就労ビザ申請→発給
在留資格認定書を受け取った外国人は、自分の国にある日本大使館などの在外公館にて就労ビザを申請します。一週間ほどでの発給となります。就労ビザを受け取った外国人は、3か月以内に日本に入国することになり、入国の際、空港で在留カードを受け取ります。
在留カードは、日本に中長期で滞在する外国人に交付される身分証明書です。出入国在留管理庁長官が適法に在留する者であることを証明する「証明書」としての役割と、許可の要式行為となる「許可証」としての役割を担っています。
入管手続き、ちょっとわかりづらいところが多かったかもしれません。しかし今後外国人と接する機会が多くなることが予想されますので、入管手続きの基本を押さえるのはとても重要なことです。ぜひこの機会に理解しておきましょう。