毎年10月は宅建試験の季節。試験後に資格予備校から解答速報と合格推定点が出され、受験生は一喜一憂するわけですが、宅建士の試験に合格した人の中には、これで不動産業で独立できる!と鼻息荒くしてる人もいるのではないでしょうか。
「宅建士の資格があれば不動産業者になれますか?」
私が宅建試験に合格したとき、これがあれば不動産業で独立することもできるのでつぶしが効くな、と思いました。しかし、宅建業の免許と宅建士の資格の違いはよく分かっていませんでした。
結論から言うと、宅建士を取ったからと言ってすぐに不動産業を始めることができるわけではありません。
今回は、宅建業免許申請についてのご紹介です。不動産業を営むためにどのような申請手続きが必要なのかということについて解説していきたいと思います。
宅建士について
宅建士の資格は宅建業の免許を取るために必要な要素のひとつです。宅建業法第31条の3では、宅建業に従事する者5名について1名以上の専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
ですから、たとえば宅建業の免許を取ろうとしている法人の代表が宅建士の資格を持っていなくても従業員の誰かが持っていれば不動産屋として開業できるということになりますし、個人事業主が一人で不動産屋を開業するのであれば、本人が宅建士を持っている必要があるということです。
宅建士(宅地建物取引士)とは、不動産取引の専門知識や技能を有する者を認定する国家資格です。不動産会社が公正な不動産取引を行うために必要とされており、業務独占資格でもあります。宅建士の主な業務は、不動産の売却や購入に関する実務や法律上のアドバイス、不動産契約の内容の説明、契約の締結などです。不動産取引における重要事項の説明や、重要事項説明書への記名・押印、契約書への記名・押印は宅建士のみが行うことができます。
宅建試験の合格したからと言って、直ちに宅建士というわけではありません。宅建試験に合格し、国土交通大臣の登録実務講習を受講することによって都道府県知事に登録できるようになります。実務講習は。約1ヶ月間の通信講座と2日間の演習で構成されています。
登録後、宅建士証の交付を受けるために、都道府県知事の法定講習を受講する必要があります。講習を2つ受けないといけないわけです。
法定講習は、受講日時が決められており年2回程度しか開催されませんが、都道府県によってはWEB講習ができるところもあるため、個別に確認が必要です。宅建士証が交付されて初めて宅建士を名乗ることができるというわけです。
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宅地建物取引業とは?
「宅地」とは、現在建物が建っている土地、建物を建てる目的で取引される土地、用途地域内の土地のこと。
「建物」とは、住宅や倉庫、工場だけに限らず、アパートやマンションの1室のような建物の一部も建物になります。
「取引」とは、宅地建物の「売買・交換・貸借」を「自ら行うか・代理するか・媒介する」ことです。代理には契約締結権限があり、媒介には契約締結権限がありません。
「業」とは、不特定多数の人を相手として反復継続して取引を行うことです。ですからこの条件に当てはまる場合は、不動産屋ではないのに宅建業の免許が必要な場合もあるということです。
たとえば、田んぼを持っている農家が、田んぼを50区画に割って家を建てたい人に売却する場合、農家は宅建業の免許が必要ということになりますが、50区画の宅地を一括してハウスメーカーなどに売却する場合は宅建業の免許は不要です。
宅建業免許申請
誰が免許をくれるのか?
1つの都道府県だけに事務所を設置する場合は知事、2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合には国土交通大臣となります。事務所の数で変わるわけではありません。1つの件に100か所事務所があっても知事許可、本店が福井県で支店が東京という場合には国土交通大臣許可となります。
許可の有効期間は5年で更新手続きは有効期間満了の日90日前から30日前までの間にやらなければならないと定められています。
宅建業免許申請の流れ
必要書類・情報の準備
申請書を作成する前に必要書類を準備します。
会社の謄本(履歴事項全部証明書) ※法人 |
役員全員の住所・氏名(フリガナ)・生年月日 ※法人 |
宅建士の住所・氏名(フリガナ)・生年月日 宅建主任者証写し |
相談役・顧問の住所・氏名(フリガナ)・生年月日 ※法人 |
5/100以上の株式を有する株主又は 5/100以上の額を出資をしている者の 住所・氏名(フリガナ)・生年月日・保有株式数・出資額 ※法人 |
宅建業に従事する者の氏名(フリガナ)・生年月日 |
事務所の土地建物登記簿謄本 建物賃貸借契約書又は建物使用貸借契約書等 |
略歴書 代表者、役員、専任の取引士、政令使用人、 顧問、相談役 |
決算書の写し(表紙、貸借対照表、損益計算書) ※法人 ※申請直前1カ年分 ※新設法人は開始貸借対照表を作成・添付 |
資産・負債に関する情報 ※個人 |
身分証明書 代表者、役員、専任の取引士、政令使用人、 顧問、相談役 |
登記されていないことの証明書 代表者、役員、専任の取引士、政令使用人、 顧問、相談役 |
代表者の住民票 |
納税証明書→税務署で取得 ※様式その1、様式その3 ※申請直前1カ年分 ※法人は法人税、個人は所得税 |
事務所の平面図・間取図 |
事務所付近の地図(案内図) |
事務所の写真 建物の全景、入口 テナント表示 事務所の入口 事務所の内部 |
収集しなければならない書類や情報はかなり多いです。免許取得を急ぐ場合や、開業準備に追われて手が回らない場合は、専門である行政書士に依頼するのがオススメです。
宅建業免許申請書の作成
申請書は各都道府県のホームページからダウンロードできます。
代表者や役員が欠格事由に該当していないかどうか、事務所が継続的に業務を行うことができる施設であって、かつ、独立性・専用性を有するかどうか、専任の宅建士が1つの事務所において5人につき1人以上の割合で設置し、当該事務所に常勤し専ら宅建業に従事しているかが主な審査基準となります。
宅建業免許の取得までの期間は、申請書提出から約60日となります。書類作成に約1ヶ月、提出してから約2ヶ月なので免許を取ろうと思って動き出したら、取れるのは3か月後ということになります。
福井県知事許可の場合、提出先はコチラです。
福井県土木部建築住宅課(県庁9階)
住宅計画グループ
電話番号:0776-20-0505
保証協会加入申請
宅建業を営む場合、宅建業者は営業保証金を供託する必要があります。主たる事務所については1000万円、その他の事務所については1か所につき500万円となっています。これは宅建業者が債務不履行をした場合にお客様に対する損害賠償を担保したものですが、金額はかなり高額です。
営業保証金1000万円を用意できない宅建業者のためにあるのが保証協会(宅地建物取引業保証協会)です。事務所1か所だけなら60万円、その他の事務所は1か所につき30万円の弁済業務保証金分担金を納付して保証協会に加入すれば1000万円の営業保証金を供託しなくてもいいという仕組みです。
保証協会への加入申請は、都道府県への宅建業免許申請と同時に行います。
保証協会は、ハトマークの全国宅地建物取引業協会連合会とウサギマークの全日本不動産協会の2つがあります。どちらに入会するかは任意。必要書類は個別に確認が必要です。
宅建業免許取得
入会審査には約30日かかります。宅建業免許申請と保証協会入会申し込みを同時に行い、保証協会入会審査通過、免許許可通知、保証協会入会金納付後、納付書の写しを提出して晴れて免許交付となるわけです。
不動産業を始めるためには宅建士の資格を持っているだけではできず、宅建業の免許が必要です。免許取得には膨大な書類の準備・作成と保証協会への入会が必要なためお金と時間がかかります。
開業の予定もあるかと思いますので事前にしっかりと調べた上で取り組むようにしましょう。