日銀 政策金利「無担保コール翌日物レート」引き上げ→小中学生向けにわかりやすく説明

投資

 日銀こと日本銀行が2024年7月に政策金利である無担保コール翌日物レートを0%から0.25%に引き上げることを決定した、というニュースが大きく報道されましたが、何をそんなに騒いでいるのかよく分からなかった人の方が多かったのではないでしょうか。

 私が社会人になりたてのころ、一番意味が分からなかったのが経済ニュースです。(ちなみに。2番目は年末調整です。)金利やら物価やら株やら為替やら…日経新聞を読んでみても全く頭に入ってきませんでした。それは当然のことで、基本的な知識がなかったからです。1+1がわからなければ永遠に九九を理解することはできません。

 ということで今回は、私が社会人1年生のときに聞いておきたかった金利についての基本的な話です。小中学生でもわかるようにできるだけかみ砕いて説明してみたいと思います。といってもかみ砕きすぎてクッソ長くなってしまいました。どうしようもないのでがんばって順番に読んでみてください。

金利を理解するために必要な言葉

 金利を理解するためには言葉の意味をイメージできないといけませんので、まずは金利にまつわる言葉から説明します。

■金利

 金利とは、借金したときに払う利子のことだとイメージしてもらって構いません。金利が上がると利子が増えますので借金する人は苦しくなり、お金を貸す方は儲けが大きくなります。金利が高くなると貯金しているときの利子も増えます。

■物価

 物の価格のことです。物価が上がるということは物の価格が上がるということです。

■国債

 国がさまざまな公共サービスをするにはお金が必要ですので、国にお金を貸して(投資して)くれた人には利子を付けて返すよという借用書のようなものです。

■日本銀行

 お金を発行する日本の中央銀行のことで、民間の銀行がお金を借りたり貯金したりもできます。国(政府)からは独立した組織と言われてはいますが、ある程度言うことを聞かざるを得ないこともあります。

■政策金利(短期金利のうちのひとつ)

 無担保コール翌日物の金利のことです。無担保コール翌日物の金利とは、今日だけ借りて明日返すような借金をするときの金利のこと。

 たとえば、A銀行がどうしても1億円今日中に振り込まないといけないとします。でも明日にならないと1億円は入ってこない。一方でB銀行は1億円余っている。A銀行は支払いのために借金をするのですが、お金は今日だけ欲しいわけです。5年後に返済するという借金だと金利が高くなって、担保(借金のカタ)も必要になりますが、明日返すという借金であれば金利が安く済み、担保も不要になります。

 メガバンクでは1日に約30兆円の資金の出入りがあり、日々資金が足りなくなったり、必要以上に余ったりして調整をする必要があります。コール市場と言って金融機関だけが参加できる市場があり、そこで今日借りて明日返すという超短期の取引に適用される金利が、無担保コール翌日物の金利であり、それを政策金利と位置付けています。

 政策金利は、景気の状況に応じて日銀により引き上げや引き下げなどの調整が行われます。景気が過熱している場合は金利を引き上げて景気を落ち着かせ、景気が後退している場合は金利を引き下げて景気回復を目指します。

■長期金利

10年物国債→10年で返さないといけない国の借金の金利のことです。

■株

 株は会社が仕事をするために必要なお金を投資してくれた人に発行する証明書で、会社がうまくいけば株の価値は高まります。株は価値が高まれば値段が上がり、他の人に売ることもできます。逆に会社がうまくいかなければ、出した資金は減っていきます。

 純粋に会社を応援しようという人が資金を出して株を持つこともありますが、ほとんどの場合は投機(金儲け目的)です。ギャンブルとして株を買い、一獲千金を狙う人もいます。

株の相続の仕方

物価と株と為替と金利の関係

物価上昇=お金の価値下落

 物価が上がる(インフレ)ということは物の価値が高くなるため値段が上がるということですが、言い換えるとお金の価値が下がるということでもあります。お金よりも物の方が価値があると判断されているのです。

 そして、お金の価値が下がっているということはお金を大事に貯金しておくよりも物に投資して値段が上がっていくのを待っている方が正解であり、その投資先のひとつが株というわけです。

 物価が上がる→株を買う→みんなが株を欲しがるから株の価格が上がる、ここ最近の投資ブームはこのような道筋をたどってきています。

なぜ物価が上がってきたのか

 物価が急激に上がったのは、コロナショックに対する経済対策によるところが大きいです。コロナショックが起こり、世界中でさまざまな活動は自粛を余儀なくされ、経済が滞りました。そこでアメリカをはじめとした世界各国が動きました。補助金や給付金で国民にお金を配り、そして金利を下げたのです。

 金利を下げるとどうなるかというと、会社は借金がしやすくなります。お金を渡すからいっぱい使え、というわけです。みんなお金が余っているためいろんなものを買い、経済が復活しました。

 ただ、急激にやりすぎたために物が不足する事態となりました。そのためどんどん物の価格は上がっていったのです。

金利が下がると物価が上がる。金利が上がると物価が下がる。

 金利が下がると物価が上がり、金利が上がると物価が下がるというロジックがいまいち分かりづらいかもしれませんが、単純に説明するとこうです。

 金利が下がる→お金の価値が下がる→物を買った方が良い→物が少なくなって価格が上がる。

 金利が上がる→お金の価値が上がる→貯金しておいた方が良い→物が売れなくなる→物を安くする。

 このように物価と金利は密接に関係しています。日銀の金融政策は物価対策と言っても過言ではありません。

日本はさらに物価が高い

 そもそも日本はコロナ前、物価はとても安かった、いわゆるデフレといわれる状況でした。日本経済がどんより曇り空状態の中で、突然見舞われたコロナショック。

 他国同様経済が止まり、なんとか経済を復活させる必要があったのですが、補助金や給付金などでみんなにお金を配ることはできても、金利を下げることはできませんでした。なぜならもうすでに金利はゼロという異次元の低金利でこれ以上下げようがなかったからです。

物価を上げようとがんばって金利を下げていたところにコロナショックが来たというわけです。よりお金が豊富なアメリカをはじめとした外国に物が集中したため、日本は高い値段で物を買わざるを得ず、物価はどんどん上がっていって今に至ります。

円安ドル高

 コロナショック解消のための経済対策でアメリカが金利を上げたことにより、物価高に加えて円安ドル高も急激に進みました。数年前まで、1ドル120円だったのが、現在は1ドル150円。つまり120円で1ドルと交換できたのに、今は120円で0.8ドルしか交換できないということになります。

 世界中のものはドルで取引されています。円安になると輸入してくるいろいろなものが高くなります。その最たるものがガソリンです。経済対策で物価が上昇中、円安であるため輸入してくる物が高い、そしてそれを運ぶために必要なガソリンまで高いということで、物価高要素の大三元が見事に確定してしまいました。

 また、アメリカの政策金利は5%にもかかわらず、日本の政策金利は0%ということで金利差が大きいため、日本円で貯金するよりアメリカドルで貯金した方が利子が大きいということで日本円からドルに両替する動きが加速して、円安ドル高に拍車をかけました。いわゆるFXブームです。

FX博打地獄

物価高対策

 物価は急激に上昇しました。200円だったカップ麺は250円になり、4000万円だった家は5000万円になりました。世界中で物価が上昇しました。コロナがひと段落し、世界各国の金融政策の甲斐あって経済は復調、株価も上昇に転じてきました。ただ物価上昇は急激なまま。

 そこで、急激な物価上昇にブレーキをかけるため、アメリカをはじめとした世界各国は金利を上げ始めました。これにより、急激な物価上昇からゆるやかな物価上昇に変わってきています。

 そして、世界の物価上昇率が安定してきたタイミングで、日銀もようやく動きました。それが「日銀 政策金利 0%→0.25%への引き上げ決定」という2024年7月のニュースです。

 基本的に金利を上げると株価は下がります。お金の価値>株となるからです。ですから急激な株価変動にならないよう、日銀はちょっとずつ金利を上げていきます。

日銀は何の金利をどうやって上げるのか?

 日銀は金利を上げるというけれど、何をどうすれば金利が上がるのかという話です。

 結論から言いますと、政策金利である無担保コール翌日物金利を0%から0.25%になるように、コール市場に供給するお金を減らすということです。

 今日借りて明日返すお金は、余っているお金が少なければ取り合いになって金利が上がってしまうため、これまでは日銀が資金を潤沢に供給して金利が上がらないように調整していました。今後は供給する資金を減らすので少し金利が上がる、それを0.25%になるように調整する、と言っているのです。

 政策金利(=無担保コール翌日物金利→短期金利のうちのひとつ)とは別に長期金利というものもあります。長期金利は10年物国債の利回りを指しています。

 日銀が金利操作できるのは短期金利のみで、さまざまな要因で動く長期金利はコントロールできません。無理やりコントロールするためには政府が発行する国債を日銀が引受けることになるわけですが、日銀は無限にお金を印刷することが出来るので、政府は日銀を頼って無秩序に国債を発行しかねず、物価が高騰する恐れがあります。また、それによって国の通貨は信用されなくなり、円安が進行することにもなります。

公開市場操作とは?

 金利を調整する方法はひとつではありません。実に様々な手段を用いて日銀は金融市場を安定させようとします。その手段を公開市場操作と言います。 

 具体的にはは、日銀が国債や手形などの有価証券を売買したり、資金を貸したりして、市場に流通するお金の量を調節します。

 日銀が市場に資金を供給するオペレーションと、市場から資金を吸収するオペレーションに大きく分けられます。略してオペとも言われ、目標は金融政策決定会合で決められます。

 公開市場操作の例としては、次のようなものがあります。

買いオペ

日銀が市場から債券や手形を購入することで、市場のお金の量を増やし、物価の下落を抑えて金利を下げる効果があります。デフレの時に行われます。

売りオペ

日銀が市場で債券や手形を売ることで、市場のお金の量を減らし、物価の上昇を抑えて金利を上げる効果があります。インフレの時に行われます。


 金利は経済の中心的存在であり、物価、為替、株などと密接につながっています。ニュースを見ていると日銀が金利を上げたときだけでなく、アメリカの中央銀行であるFBIやユーロ圏の中央銀行であるECBが金利を上げたり下げたりしてときも大きなニュースとして扱われます。

 金利は自分には関係のない話に思えるかもしれませんが、経済全体を理解するうえでとても重要な要素のひとつです。ぜひ注目して見てみてください。