行政書士として自信満々に開業したけどお客さんが来ないから仕事がない、先生と呼ばれるのに実務が全く分からない、だから自信を持って営業もできない…開業後間もなく、ひとりでは何もできない自分のダメダメさに気づきました。情けない気持ちでいっぱいで、毎日焦っていました。

どうしたらお客さんが来るのか、どうやって実務を覚えればいいのか、夜も眠れないほど考えていて、不安な気持ちで日々過ごしていました。もうちょっとで心がポッキリ折れてしまいそうな、そんな弱弱しい開業したての自分のことを今でもよく思い出します。
今回は、私の体験談です。
極めて個人的な話なので、同じように悩んでいるあなたのお役に立てるのかどうかは分かりませんが、何かしら局面打開のきっかけになればいいなと思っています。
お客さんが来ないと机の上でうなだれていても仕方ない、まずはゼロをイチにするしかない。そう考えた私は行動を起こします。
まずはゼロをイチにするしかない。
私の今の人脈と実力でできそうな仕事は、車の所有者名義変更だけ。崖っぷちの私は友人知人に声を掛けまくりました。必死過ぎてみっともない私を神様が気の毒に思い、助け舟を出したのでしょうか、とにかく無我夢中で必死に声をかけまくればなんとかなるもので、たまたまベンツに乗っていた友人が、維持費がかかるから車を買い替えるというタイミングで、そのベンツを別の友人が買うという話が舞い込んできて、そのベンツの所有者名義変更の依頼をいただくことができました。
車の個人間売買における所有者名義変更には、車庫証明もセットでして(そのときは当然知らなかったわけですが)、併せて受任することができました。
受任から業務完了までひと月ほどかかり、そのときの報酬は友人価格で1000円。でもお金じゃありません。ついにゼロがイチになったのです。
これはとても重要な意味を持っていると個人的には感じていました。
もしあなたが当時の私のように、仕事がなくて不安で仕方ない、焦っているというのであれば、とにかく人に声をかけまくってみてください。泥臭いドブ板営業は、どこかのタイミングで一度は経験しておく必要があります。ドブ板営業の経験なくして成長はなし、といっても過言ではありません。行動して初めて見える世界というものは確かに存在するのです。
もう一つ重要なことがあります。それは、今の自分に使えないような情報は単なるノイズであるということです。知ってしまったがゆえに迷ったり行動できなくなったりする情報は増やさない、ということも知っておいてもらえたらと思います。
建設業許可を新規で取りたいから相談させてほしい、という新規のお客様からのご依頼があったのは、この業務のすぐ後のことでした。それからも産廃収集運搬業許可、古物商許可の申請依頼がポンポンと入ってきます。ついに来た!と思いました。ところがそう甘くないのが個人事業主の世界。ここからがまた大変なのです。
成長曲線てご存じでしょうか。
人の成長は正比例のグラフのようにきれいな右肩上がりの直線ではなく、最初横ばいでそこから指数関数的に伸びていく、2次関数のグラフのようなものであるというあれです。

これを見ると、軌道に乗れば一気に上昇していくという感じなのですが、私の肌感とはちょっとズレがあり、イメージだとこうです。

ある程度成長するといったん止まる、しばらく頑張ってるとドーンと伸びる、そしてまた止まる。このような階段上の成長の仕方であり、なんなら下がることもある、これが私の実体験から得た肌感覚です。
きついのはこの横ばい状態のときで、何をやっても自分の成長が感じられなくてじわじわとメンタルがじわじわ削られていきます。
ゼロからイチになったんだから、そこから加速度的に五、十、ニ二十、百と成長していけるかと思いきや、全くそんなことはないのです。
成長曲線の軌道に自分を乗せる。そのためには勉強するしかありません。メラゾーマを使いたかったらとにかく地道にレベルを上げる。実に単純なことです。
とにかく実務を覚えなければならない!
まずは実務を覚えることから勉強しなければなりません。お任せください!とお客様に自信を持って営業できるメンタルが必要だからです。
さて実務を勉強するにはどうすればいいかということですが、一般的には専門書を買ってみたり行政から出ている手引き書を印刷して読んでみたりする方が多いと思います。それ自体、否定するものではありませんし、どんどん勉強してもらって結構なのですが、その勉強で得られるのは書類の書き方や提出期限、提出先などの表面的な情報であり、受任してからでもギリ間に合ったりもします。
それよりも私がオススメする実務の勉強は「会社設立」です。
私のような許認可専門の行政書士のお客様は、基本的に個人事業主や会社の代表です。その人たちが通ってきた道、あるいはこれから通ろうとしている道を自分も歩いてみる、お客様の立場に立って考えてみる、これはとても重要なことだと思っています。
■会社ってどうやって作るの?
■会社を作るメリットとデメリットは?
■かかる税金は?
■株式って何?
会社設立を勉強すると、派生的にいろいろなことを勉強しなくてはいけなくなります。
■会社を作るために必要な許認可
■受けられそうな補助金
■決算書、損益計算書、貸借対照表
(最初、私はこれらの言葉を見ただけで拒絶反応を起こしていました…)
■税金や社会保険
■行政手続きオンライン化
■事業承継や相続
などなど、これから様々な業務を受任するにあたって必要となる知識が、点ではなく一本の線として横断的に理解できるようになります。

会社を作るのは思っているよりも簡単です。必要な書類はネットで準備できますし、期間も3週間ほどあればできます。
しかし、それを取り巻く周辺知識は膨大で理解するのにとても時間がかかります。やればやるほど遠回りに思えるかもしれませんが、ワープはありません。本質、原理原則を理解することがたったひとつの最短経路だと私は思っています。
まずは会社設立の基本的なところからはじめて全体像を理解し、そこから徐々に自分のやりたい業務に関連するところを中心に学んでいく、これで海千山千の社長たちともメンタル的に対等に話ができるのではないでしょうか。
さて、実務は何とか理解できたけど、
それでお客さんが来るのか?
ということですが、答えはNOです。
実務と同時並行的に学ばなければいけないことがあります。それはマーケティングです。
マーケティングとは、商品やサービスの準備、集客、セールスなど、商品やサービスを売るための一連の仕組みのこと。マーケティングと言っても大企業がやっているようなお金をかけた大々的なものをするわけにもいきませんし、かといってドブ板営業だけをやっていても一を十にすることはできません。
お客さんから直接反応があるようなマーケティング
これを実践する必要があり、徹底的に学ぶ必要があるのです。ダイレクト・レスポンス・マーケティングという分野です。

私は不動産営業の経験がありまして、必然的に限られた数のお客さんに対して高額商品を販売しなければいけない立場だったものですから、Jエイブラハムやジョセフシュガーマンなどの有名どころのマーケティング本にはひととおり目を通し、研修や勉強会にも参加してで徹底的に学びました。
マーケティングは奥が深く、有益で具体的なノウハウを学ぼうと思うと結構お金がかかります。本屋で買えるレベルの内容だと、個人が実戦で使うことはおそらく永遠にないような向こう側の話であったり、延々と精神論が語られた挙句、そっから先が知りたいんだよ!というところで終わっているようなものがほとんどであるため、教材を探そうと思うと苦労します。
また、最近ではwebマーケティングが流行っていますが、面倒くさいことや泥臭いことは徹底的に省きたいという気持ちが透けて見えるためか、それをやっていて周りでうまくいっている人に出会うことがほとんどいないので、軽い気持ちでやるのはオススメしません。
ただ探せば本物もいっぱいあります。これは!と思うものがあれば買ってみたり、積極的に参加してみたりするのが良いのではないでしょうか。
行政書士として開業したけど仕事がない、
実務に自信がないという、
3年前の私のようなあなたへ。
そもそも人のメンタルなど弱いのが普通です。そこを何とか踏ん張って、まずは泥臭く営業して、ゼロをイチにしてください。
そして、あきらめず学んでください。実務とマーケティングです。
学び続ければ、ある日を境にインストールできる情報の量と質が大きく変わり、実務に自信が持てるようになり、指数関数的な成長曲線の軌道に乗っていけます。
あなたが、かつての私のように悪戦苦闘しながらも自らの力で明るい未来を切り開いていくことを心から楽しみにしています。